大学を卒業してから木型の製作加工やそれらの発展の立体加工を行う会社に就職し、そこで杉の木を使用した幼児向けの乗り物のおもちゃを制作しています。
新入社時から新たな部門に配属されたこともあり、実際の制作以外にも、図面の作成や企画など幅広い制作業務に直接かかわることができ、たくさんの刺激を受けています。
立体の制作や木工にもとても興味があり、なにより制作をすることに関わりたいと思っていたのでこのような会社で働かせていただけることをとてもうれしく感じています。
在学中は、できるだけいろいろな側面から人の感覚に訴えかけ、物事の捉え方の多様性を五感で体感できるような作品を作りたいと思っていました。そのために、油絵具での絵画制作だけでなく、平面・立体・映像などの様々なメディアで、表現方法や使用する材料を工夫しながら制作を重ねました。
京都嵯峨芸術大学では専門分野の垣根を超えての交流が当たり前のようにあるので、学生はもちろん先生方とも分野に関係なく親しく話をしたり、お世話になったりすることが良くあります。私の場合は、立体的な作品を作ることが多かったので、油画分野で芸術表現のなんたるかを教わりつつ、同時に彫刻分野の先生方にも制作技法についてのアドバイスや作業の面倒を見て頂くなど、他分野の先生方にもいろいろな場面でお世話になりました。
周りの力を自分の力へと変えてください。少人数であるからこそ、友達や一緒に制作している仲間の頑張りや努力を間近で見ることができると思います。友達のやる気は自分のやる気に繋がり、そして自分のやる気は必ず誰かの心を動かします。嵯峨芸油画は少人数でありながら、それぞれが全く異なった個性的な作品をつくっています。それがまたそのような効果をより大きくしているのだと感じます。
そして、大学内に留まらず、作品をより多くの方へと発信していってほしいと思います。皆さんの作品や思いはきっとみなさんが思う以上にアイディアに溢れ、輝いていると思います。
限られた4年間と言う時間にどれだけ多くのものを見て感じることができるかは自分自身にかかっています。 たくさんの出会いこそが、発想の幅を広げ、また自分の考えをより確かなものにしてくれます。しかしそれらを吸収する姿勢や行動力だけは人から与えてもらうことは難しいことです。柔軟な吸収力は素直さと好奇心に支えられるものだと思います。行動力は自分の表現への渇望や思いの強さにあらわれるものだと思います。
そしてそのために決して忘れてはいけないことです。真剣に遊んでください。どんなことでも楽しむこと!そういった中での発見は案外制作しようと意気込んで考えたものより、自分らしい色が出ます。たまには背伸びをすることも大事ですが、そのときの感情や感覚を大事にすることも後々自分にとって大きな力になり、何よりすばらしい思い出になります。
私が美術系の進路に決めた理由は、「1つでいい。自分の納得のいく作品を作りたい」と思っていたからです。小さい頃から絵を描いたり作ったりするのが好きだったのですが、周りの人が認めてくれるものはどれも自分からしたら納得のいく仕上がりのものではないものばかりでした。有名になりたいわけじゃない。ただ、1つでいい。この4年間で自分の納得のいくものをつくり作品として何かを伝え示すことができたら…ところが不思議ですね。大学を卒業した今もつくりたいものがたくさんあります。実際自分の納得のいく結果の作品ができたかと言われるとはっきりとはわからないところではありますが、つくることはやめられなくなりました。
嵯峨芸での4年間は私に制作をすること・表現することの楽しさを教えてくれました。それはもちろん京都、特に嵐山という文化・歴史・自然に恵まれた豊かな環境もさることながら、いつも親身になって話を聞いてくださり指導してくださった先生方や周りの友達、先輩方がいたことが大きな理由だと思います。
まだ嵯峨芸を知らないみなさんに、制作すること・嵯峨芸油画の魅力にぜひはまりこんでほしいと思っています。
旧・京都嵯峨芸術大学 油画分野(オフィシャルサイト)