6月29日(金)、大西沙季「what do YOU see ahead that」展会場にて、絵画道場ディスカッション「大西沙季の作品をめぐって」が開催されました。
大西さんのテーマは、「空間を染める」です。
その言葉のとおり、展示空間は、蛍光ピンクの糸が3次元的に張り巡らされ、白い壁面に囲まれた中では糸の集合体はピンク色に発光しているかのようです。
作品の向こう側に人が立つと、人の姿は糸の色で染まり、濃い色の服ほど糸の色が濃く見え、人の顔などの詳細は見えなくなり、個別を認識する要素が曖昧になります。
「シンプルなもの(統一された色)で装飾された部屋は、その中の空気もその色に染まる」という考えで、空間に設置されたモノが作品ということではなく、設置されたモノによって作り出される状況が作品だと大西さんは言います。
タイトルの「what do YOU see ahead that ? 」の通り、その先に何が見えるのか、空間が染まっている状況でこの作品を通して見たものに何を感じるのか。問いかけています。
参加者からは、
◯壁と壁との間に張られた糸が、ピンと張った状態ではないことで、絵画でいうミニマルな塗りとは違ったロスコ的な筆跡のゆらぎの効果を感じる。そう考えると、壁と糸の接点の状態が、絵画のキャンバスの端の処理のように気になってくる。端の部分だけ透明にするというのはどうか。
◯ライトに照らされた糸とそうでない糸の見え方の違いが興味深い。ライトが当たると、糸の構造、仕組みが丸見えでネタバレのようになってしまう。しかし、照明のあたっていないところは、抽象性が高く、前後の距離が曖昧になる。
◯作者の過去作を見ていた参加者から、壁面を装飾することで内側の空間を染めた前作と、内側を装飾することで周囲の空間を染めた今回の作品作品写真で並べて見た時、そこに意味が生まれそうで面白い。
oneroom`12展示風景
などの感想や意見が交わされました。
また会期中、展示の完成までの様子を、パフォーマンスとして公開していたことから、この作品とともに工程、過程を映像で見せるのはどうかという提案がありました。
これに、この状態になるまで苦労のドキュメンタリーになるなら見せたくないが、記録映像としてなら空間が染まっていく過程を提示するのは考えてみたい
と大西さん。
大西さんは、視覚が見る人の心理に及ぼす作用に興味があるといいます。
この展示は、空間を染めるということめがけて作ったもので、そこに決まりきった意味付けはないが、この状況から様々な意見が生まれることで、次の作品に繋がっていくから有り難いという言葉で締めくくられました。
大西さんの個展形式での展示は7月3日(火)まででしたが、この後の絵画道場フェスティバルINDEX2012でも引き続き展示していますので、是非直接体感してみてください。