絵画道場vol.51 「渡邊華菜の作品を巡って」
2013年7月18日(木)
渡邊 華菜の個展[ scream ]の作品を巡るディスカッションが展示会場アートプレイスU2にて開催されました。
展示空間を眺める形で座席が配置され、作者は来場者とほぼ対面に着席し、ディスカッションが開始されました。
今回、作者である渡邊さんが提示したディスカッションのテーマは「そのモチーフを選ぶ理由」です。
制作のためのモチーフ選択について、「好き/嫌い」や「モチーフに惹かれる」「これを表現したい」という、多少なりともの“愛”が動機になっている作家は多く、渡邊さんは自身のモチーフの選択基準に“愛”が無いことを説明した上で、参加者に「そのモチーフを選ぶ理由」について問いかけました。
展示のタイトル[ scream ]は「(恐怖・苦痛などのために)叫び声をあげる」という意味合いで和訳される単語です。(
※1) 渡邊さんは絵画道場の展示をするにあたって、制作のモチーフとして ホラー映画 を選びました。
映画を再生、一時停止し、グロテスクな各シーンの静止画を見ながらドローイングや油彩の作品を制作したのだそうです。
しかし、作者自身はホラー映画に特別の関心を持ってそれを選択したのではないと言います。
ホラー映画特有の恐怖、あるいはグロテスクなど、ネガティブなシーンを選び取り、映画の中で既に完成している構図を抽出して会場に並べることで、それらが「鑑賞者の関心を惹き付けやすいもの」であるという構造を狙い、使用しています。
参考にした映画も作家自身の好みとは関係なく、なるべく一般に有名とされている作品が選択されています。
「ホラーに愛はないが、人がホラーを観れば興味を持ってくれるだろうと考えて描いている」と渡邊さんは言います。
会場の作品は、ホラー映画のシーンである事は分かる一方で、確かにどこかカラッとした印象があります。
ディスカッションが進行するにつれて、参加者からもモチーフの選び方につて様々な意見が伺えました。
渡邊さんと同じく、モチーフへの個人的な関心とは関係なく制作しているという意見もあれば、やはりモチーフへの何らかの“愛”が動機で制作へ向かうという意見もありました。
「映画作品を選ぶ際には監督名やストーリーで選んだのか。」
という質問に対し、
「有名な映画を作品名で選んだ。」
と、まさしく愛の無い返答で返すやり取りも参加者を楽しませた様子でした。
2013年度前期の絵画道場は渡邊華菜展をもちまして終了です。次回は後期の夏休み明け、四大油画分野の学生からスタートです。
たくさんのご来場をありがとうございました!今後ともよろしくお願い致します。
(文 : 短期大学部美術研究室 教務助手/海野 由佳)