絵画道場vol.55「鈴木ひとみの作品をめぐって」
2014年5月8日(木)
鈴木ひとみの個展「すずきの巣」の作品を巡るディスカッションが展示会場のアートプレイスU2にて開催されました。
絵画道場ディスカッションは今回で第55回目迎えることとなりました。2006年から始まり、今年で9年目!今度ともよろしくお願い致します。
さて、年度初めの展示ということでまず「絵画道場」について改めて説明させて頂きますと、この「絵画道場」という企画は、「展示」と「ディスカッション」がセットで行われます。展示をシリーズ「絵画への意志」、ディスカッションを「絵画道場」と呼び、それを2つ併せて「絵画道場企画」として行っています。
「展示」では現代において絵画を制作することへの意味やその在り方について表現していくことについて、「ディスカッション」では実際に作品を見ながら絵画表現について考えていく場所を目的としています。今後も継続して行っていきますので、何卒よろしくお願い致します。
さて、絵画道場ディスカッションの内容に入ります。
今回の展示は油画の大学院1回生の鈴木ひとみさんです。
今回の展覧会では絵画と巣箱とビニールに描かれたインスタレーションが展示されています。
鈴木さんは「生きること癒し癒されること」をテーマに作品を制作しているそうです。自身の体験を絵画に照らし合わせ、「すごい絵」や「うまい絵」ではなく、見れくれた人の中で、目に見えない心の薬となるような、そっと共感してもらえるような、そんな在り方ができるものが作りたいと言います。
鈴木さんの絵画作品のほとんどは対(つい)で構成されており、一枚の絵に対してもう一枚の絵が対等な関係で構成されています。鈴木さんはそれを自己と他者だとも言い換えています。ビニールと巣箱に描かれた作品も、巣箱とビニールでそれぞれ対応する箇所があり関係しあっているといいます。
ディスカッションでは鈴木さんが述べる「対」の在り方と、見る側の感じ方についてが議論され、作者の側としては「対」である作品が見る側にうまく伝わっていないのではなど、作者・作品・鑑賞者の関係を巡る、作品制作の在り方などについて様々な意見が交わされました。
しかし、そうやって言葉で説明できる全てのものの外側に絵画性、絵画のおもしろさがあるのでは、という話もされました。
そういう意見があってからふと絵を見なおしてみると、今までの話だけでは説明できないもの、やはり絵画がそこにちゃんとあることが新鮮でした。これも作品を前にディスカッションする絵画道場のおもしろさの一つだと私は思います。
さて、次の絵画道場は短期大学部です。また詳細が決まりましたらウェブにてご連絡いたします。
今後ともよろしくお願い致します。
(文/京都嵯峨芸術大学 油画分野 教務助手:寺岡海)