絵画道場vol.58「 モリモトマサシの作品をめぐって 」
2014年7月17日(木)
モリモトマサシの作品を巡るディスカッションが展示会場のアートプレイスU2にて開催されました。
展示会場には、キャンバスいっぱいに顔が描かれた作品が展示されています。
どの作品も統一して、ハイコントラストと限定的な配色で表情が強調されています。
モリモトさんは、インターネット上で話題になり所謂 コラ画像 や パロディー として乱用されている、政治家の顔や映画のワンシーンでの顔などのイメージをキャンバスに描きます。
その時々の話題によってネット上に掲載される著名人の画像ですが、やがて話題の波が去った後も尚表情のインパクトだけで人を惹き付け、ネット利用者に二次創作の画像を作らせる事があります。そういった力のある表情を選び取り、その要素を持つ皺のラインを抽出して描くことで作品としています。
今回の絵画道場では、作家自身が制作過程で意識してきた問題や意見 を来場者に問いかける形式で行われました。
『 作品とそうでないもの 』
モリモトさんは今回の作品以前、ルーズリーフに油彩で描く抽象画の作品を制作していました。
( 過去作品参考 :
http://www.sagayuga.com/contents/crosspoint/item_667.html )
しかし、制作を続けるうちに違和感を感じ始めたのだと話します。
「 抽象っぽいものを描こうとして抽象画を描いていないか 」
「 作品とそうでないものを分けていないか 」
という疑問に対し、モリモトさんは今回、作品として意識しないものを作ったのだそうです。
「作品とそうでないもの」について意識した、或は考えた事があるという方は、来場者の中にも何名かいらっしゃるようでした。
例えば、何気なく気張らずに描く落書きのようなものと、作品として発表するために形にするものを、自主規制によって分けている人が多く居るということに、モリモトさんは違和感・疑問を感じています。
制作過程の中で、無意識に「こういうものは作品にはならない(発表すべきではない)」という自主規制が働くことにより、作品が本来やりたいことと離れたものになってしまった経験があるのだそうです。
モリモトさんの問いかけに対し、来場者の中には同じ経験のある方、また少し違った意見を持たれた方など、「作品として見せるもの・見せないもの」の考え方についての意見交換がされました。
前期の絵画道場は今回の展覧会で最後となります。
後期展覧会もぜひ宜しくお願い致します。
(文 : 短期大学部美術研究室 教務助手/海野 由佳)