絵画道場ディスカッションvol.61「池田ひかるの作品をめぐって」
2015年5月12日(火)
池田ひかるの作品を巡るディスカッションが展示会場のアートプレイスU2にて開催されました。
展示会場には池田さんの作品が5点展示されました。
池田さんは自分の記憶をもとに作品を制作しているといいます。ある出来事を思い出して作品をつくろうとすると、自分の記憶と出来上がった作品とでは違う印象を持つものになってしまうそうです。そのような記憶の曖昧さ、自分のイメージと絵画の関係をテーマに作品制作を行っているといいます。
作品は「幼い時に撮影された見に覚えのない写真」や「昔に見た印象に残る夢」、「幼い時に遊びに行っていた祖母の家」など、現在の自分からは離れた出来事や場所を対象に描かれています。そのように対象を設定することにより自分の記憶の曖昧さを引き出しているようにも思えます。その記憶の曖昧さが独特なノスタルジックな画面を作り出している一つの要因のようにも感じさせます。
ディスカッションでは自分が油絵を描く理由、表現と扱うメディアについての話になりました。
なぜ自分は油絵を用いて制作しているのか、果たしてそれが一番よい方法なのだろうかなど、制作につきまとう疑問についてそれぞれの考え方を話し合われました。
しかし、制作を行う上で、言語化できない部分や意図して作品化できない部分もあり、作品に表れるそれらに対して作者が敏感にならなければならないのではないか、などの意見も交わされました。様々な表現方法がある現在、自らの制作方法を模索していくこと自体が自らの表現になっていくことにもなるのかもしれません。
「池田ひかる 展」は5月19日まで開催しています。
次回の展示は短シリーズ《シリーズ 絵画への意志 vol.62 環ル / ヤマダシホリ展》です。絵画道場ディスカッションは5月21日(木)の16時半からを予定しています。皆様のご来場をお待ちしています。
(文:造形学科油画分野 教務助手 寺岡海)