学生から「転機となった作品はありますか?」と、質問されたのですが、「・・・・・」自分でもよくわかりません。
制作するにあたっての中心的な素材や手法の変化は、ところどころであったことはあったのですが、「転機」というにはそれぞれ気恥ずかしいような気がしてしまいます。なるべく筆を洗わなくてもすむようにとか、持ち運びやすいようにとか、きっかけはろくでもないことばかりのような気がします。たまたま、とか、なりゆきで、とか。
「LANDSCAPE OF MIMESIS」
和紙・アクリル板にミクストメディア 200x300cm+α 1993年
この作品は「00コラボレーション:詩と美術」という展覧会に参加したときのものです。現代詩の広瀬大志さんとのコラボです。
それまでの作風と大きく変わったわけではありません(と、自分では思います)が、「絵画の内臓として詩を呑みこむ」「呑みこんだものが画面から新たな質を伴って匂いたつ」ような感覚に気持ちが昂るのを抑えることができませんでした。その一方で、コラボ相手の広瀬さんがこの作品を認めてくれるだろうか・・・というような怖さも強烈に感じていました。ですから、作品が完成して会場に展示したときに「すごい!」と言ってくれた広瀬さんの言葉は、何よりもうれしかった。
批評家に何を言われようが別に怖くもなんとも無いのですが、作品を曝け出しあいながら踏み込んでいく制作は、お互いに異次元の刺激を与え合うものなのでしょうか。気を抜けない重圧と畏れに耐えながらの制作だったので、今でも強く印象に残っている作品です。
ある意味「転機となった作品」なのかもしれません。
「LANDSCAPE OF MIMESIS (yamainugiri)」
和紙・アクリル板にミクストメディア 200x300cm 1997年
その後に、グループ展ではなく個展の形式でコラボレーションを行っています。そしてさらに映像作家の関根博之さんを加えて、「詩と映像と美術のコラボレーションシリーズ」として展開していくことになります。
08/06/26