画家という職業に憧れを持って、卒業後は東京へ出ました。
日本の芸術の現状を自分の目で把握したいという理由からです。
縁あって画廊や展覧会の搬入、搬出、審査の立ち会いのバイトや、家の近くにあるアトリエなどで様々な作家活動をしている人たちと出会いました。
そして、いろんな形で制作活動を展開している人たちと出会いました。
自分の住んでいるアパートは芸術家や漫画家、帽子職人など、バラエティーに富んだ人たちが住んでおり刺激になります。
厳しさの中で戸惑い、憧れ、尊敬し覚悟が生まれました。
僕の学生の頃の話をします。
自分の作品を先生に見て頂いたときのことでした。
いろんな専攻の先生に観て頂きましたが、あまり評価はあまりよくなかった記憶があります。
が、ある先生はこの1部分だけを切り取って観ると面白いと言って下さりました。
とても悩まされました。
どこが良いのかわからないのです。
一番見せたい部分ではなくて意識の薄い部分なのです。
きっと先生は僕より自分の絵に深く潜り込んで、何らかの可能性を画面の中から見つけているのです。
学生時代の僕は自分の好きな画家しか勉強せず、ただ自分の感覚を頼りに描いていました。
自分の感性にそぐわないものには興味を示さず、先生からすれば困った生徒だったと思います。
20代前半はまだまだ頭が柔らかく、素直なのでたとえ自分の好きな画家でなくとも、先人の画家たちの仕事を研究し、現代のアートに触れ、常に制作の助けとなるようなことを発信してくれている先生の話をキャッチできるようなアンテナを持って下さい。
時に自分の意志に反することを言われても流してしまうのではなく、自分なりに考え、消化してほしいです。
先生方も生徒に話をするのはとてもエネルギーを消費することだろうし、そういうものも受け取って頑張って下さい。
受験生の頃の自分は、物を正確に捉える力も表現力もありませんでした。
ただ目の前にあるモチーフを写しているだけで、鉛筆デッサンに於いても線に魅力がないと言われた記憶があります。
芸術の文化を築いてきた画家たちの研究も怠っていましたので、自分の絵の良し悪しも自分の中での価値観でしか判断できませんでした。
勉強、そして研究により裏付けされた絵を視る力のある人の眼が必要でした。
個人的にはそういう眼が育っている人は大学とか別にこだわる必要がないかと思います。
しかし嵯峨芸にはそうした優秀な眼を持つ先生が揃っています。
嵯峨芸の油画は具象画、抽象画、古典的なアートや現代アートなど幅広く勉強できます。
入学されるみなさんの学びたい方向性の道しるべに先生方はなって下さると僕は思います。
山下 洋介
略歴