高校から美術系の学科に通い、大学でも芸術学部。ずっと油画の勉強をしてきました。7年もの間、毎日遅くまで油絵具にまみれてキャンバスと格闘してましたね。でも、今の仕事は油画とはまったく関係のない舞台背景の制作。人によっては「めざす道を諦めたのかな」なんて思われるかもしれないですが、私にとっては、宝塚舞台ほど「自分のやりたいこと」を実現できる仕事は他にないんです。
大学に入学し、油絵を描く毎日の中で、自分は「油絵」そのものよりも、モノを作り、その作品を見て喜んでもらうのが好きなんだということに気づき始めました。きっかけは大学時代の自主展やイベント。来場者の方に作品の感想を聞かせてもらう度、その思いは強くなりました。また、先生との合評・友人と意見を交わすことも刺激になりましたね。嵯峨芸は、学生たちが精力的に自主展を催したり、教員主催のイベントがあったり、「作品を見てもらう」機会には事欠きませんから、就職活動を始める頃には、入学時の自分とはずいぶん変わっていたんじゃないかと思います。
だから、今私が大勢の観客の前で、きらびやかなスターを演出できる宝塚舞台で働けていることは、幸運という他ありません。全国各地の公演にセットを届けるため大忙しの毎日ですが、作業の一つひとつがお客さんの喜びにつながっていると思えば、「忙しさ」イコール「やりがい」なんですよね。